ふとした瞬間に鏡を見て、こめかみ部分の髪が以前より後退しているように感じる、あるいは髪の毛が細くなってきた気がする。そんな変化に気づいた男性は少なくないかもしれません。こめかみの薄毛は、男性型脱毛症(AGA)の初期症状として現れることが多い代表的なパターンの一つです。AGAは、遺伝的要因と男性ホルモンの影響によって引き起こされる進行性の脱毛症であり、日本人男性の約3人に1人が発症するとも言われています。AGAによる薄毛の進行パターンはいくつかありますが、大きく分けて、生え際がM字型に後退していくタイプ、頭頂部(つむじ周辺)がO字型に薄くなるタイプ、そして両者が同時に進行し、最終的に側頭部と後頭部以外の髪が失われるU字型タイプがあります。こめかみの薄毛は、特にこの「M字型」の初期段階として現れることが多いのです。なぜAGAが起こるのか、そのメカニズムには男性ホルモンが深く関わっています。男性ホルモンの一種であるテストステロンが、毛根付近に存在する5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。このDHTが、毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、髪の毛の成長期を短縮させる信号が送られます。その結果、髪の毛は太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に細く短い毛(軟毛)に置き換わっていきます。このプロセスが繰り返されることで、見た目にも薄毛が進行していくのです。こめかみ部分の毛根は、このDHTの影響を受けやすい性質を持っていると考えられており、そのためAGAの初期症状が現れやすい部位とされています。したがって、こめかみの薄毛に気づいた場合は、「単なる気のせい」「年齢のせい」と片付けずに、AGAの可能性を考慮し、早めに対策を検討することが重要になります。進行性の脱毛症であるため、放置しておくと薄毛は徐々に広がっていく可能性があるからです。
2月27