AGA治療には、フィナステリド内服薬とミノキシジル外用薬の併用が標準的な治療法の一つとされていますが、あえて「フィナステリドのみ」を選択するケースも少なくありません。その背景には、いくつかの理由やメリットが考えられます。まず、治療のシンプルさと手軽さが挙げられます。フィナステリドは通常1日1回の服用で済むため、毎日決まった時間に塗布する必要があるミノキシジル外用薬と比較して、治療継続の負担が少ないと感じる方がいます。忙しい生活を送る方や、煩雑なケアを避けたい方にとっては、内服薬のみという手軽さは大きなメリットとなり得ます。次に、コスト面での考慮です。フィナステリドとミノキシジルを併用する場合、当然ながら両方の薬剤費用がかかります。フィナステリド単剤であれば、治療費を抑えることが可能です。特に長期的な治療となるAGAにおいては、経済的な負担は無視できない要素であり、コストを重視して単剤治療を選択する方もいます。また、副作用のリスクに対する懸念も理由の一つとなり得ます。フィナステリド、ミノキシジルともに副作用の可能性はありますが、使用する薬剤の種類が少なければ、理論的には副作用のリスクも限定されると考えられます。特にミノキシジル外用薬による頭皮のかぶれや、内服した場合の動悸・むくみといった副作用を避けたいと考える場合に、まずはフィナステリドのみで様子を見たいという選択がなされることがあります。さらに、AGAの進行度が比較的軽度な場合や、主な目的が「これ以上の進行を防ぐこと(現状維持)」である場合にも、フィナステリド単剤治療が選択されることがあります。特に20代や30代前半でAGAを発症し始めた初期段階であれば、フィナステリドのみでも進行抑制効果を十分に得られる可能性があるため、最初のステップとして単剤治療から開始することが多いです。これらの理由から、個々の状況や価値観、治療目標に応じて、フィナステリド単剤治療は有効な選択肢となり得るのです。
月別アーカイブ: 7月 2020
フィナステリド単独療法の効果と限界点
フィナステリドのみを用いたAGA治療は、抜け毛の抑制や現状維持を目的とする場合に有効な手段ですが、その効果には限界があることも理解しておく必要があります。最も重要な限界点は、「顕著な発毛効果」が期待しにくいという点です。フィナステリドは、AGAの原因であるDHTの生成を抑制し、ヘアサイクルの乱れを改善することで抜け毛を減らし、既存の毛髪を太く長く成長させる効果は期待できます。しかし、毛髪を作り出す毛包そのものがすでに消失してしまっている場合や、AGAがかなり進行してしまっている場合には、フィナステリド単独で失われた毛髪を再生させることは困難です。毛量を増やしたい、明らかに薄くなった部分を改善したいといった、より積極的な発毛効果を望む場合には、フィナステリド単独では物足りなさを感じる可能性が高いでしょう。このようなケースでは、発毛促進作用を持つミノキシジルとの併用が一般的に推奨されます。また、効果の発現には時間がかかり、個人差が大きいという点も限界の一つです。服用を開始してもすぐに効果が現れるわけではなく、最低でも3ヶ月から6ヶ月、場合によってはそれ以上の継続が必要です。そして、すべての人に同じように効果が現れるわけではなく、中にはフィナステリド単独では十分な効果が得られない方も存在します。さらに、フィナステリドの効果は服用を継続している期間に限られます。服用を中止すると、抑制されていたDHTの生成が再び始まり、AGAは再び進行し始めます。つまり、効果を維持するためには、長期的に服用を続ける必要があるのです。これは経済的な負担や、長期服用に対する心理的なハードルにもなり得ます。副作用のリスクもゼロではありません。頻度は低いものの、性機能に関する副作用(性欲減退、勃起機能不全など)や、抑うつ気分、肝機能障害などが報告されています。単剤治療であっても、これらのリスクは存在することを認識しておく必要があります。これらの限界点を理解した上で、医師と相談し、自身の治療目標やライフスタイルに合った治療法を選択することが重要です。