医療用かつらは、単なる容姿を補うための道具ではなく、治療中の患者さんの心に寄り添い、QOL(生活の質)を支える重要な役割を担っています。抗がん剤治療や脱毛症など、様々な理由で髪を失った方々にとって、最適なかつらを選ぶことは、精神的な安定を取り戻し、社会生活を続ける上での大きな助けとなります。医療用かつら専門のアドバイザーとして長年多くの方と接してきた経験から、その選び方のポイントをお話ししたいと思います。まず最も重視すべきは、やはり肌への優しさです。治療中は肌が非常にデリケートになっていることが多いため、ベース部分の素材選びは慎重に行う必要があります。直接頭皮に触れる部分には、柔らかく低刺激性の素材、例えばシルクやオーガニックコットン、医療用シリコンなどが用いられているかを確認しましょう。JIS規格(S9623)に適合した製品は、皮膚刺激性などの基準をクリアしているため、一つの目安になります。通気性も重要な要素です。長時間着用することが多い医療用かつらは、蒸れにくいことが快適性の鍵となります。ベースにメッシュ素材が使われていたり、通気孔が設けられていたりするかを確認し、実際に試着して蒸れ感がないか確かめることが大切です。次に、自然さです。見た目の自然さは、患者さんが自信を持って外出するために不可欠です。毛質(人毛、人工毛、ミックス毛)、毛量、髪色、そして特に生え際やつむじの作りが自然に見えるかどうかがポイントになります。人毛は最も自然ですが手入れが必要ですし、高品質な人工毛は手入れが楽で自然なものも増えています。ご自身のライフスタイルや手入れにかけられる時間などを考慮して選びましょう。試着の際には、様々な角度から鏡で確認し、可能であればご家族や友人に意見を聞くのも良いでしょう。サイズ調整機能とフィット感も欠かせません。治療による体調の変化で頭のサイズが変わることもあるため、アジャスターで細かくサイズ調整できる機能がついていると安心です。また、ベースの伸縮性や形状が頭にしっかりフィットし、ずれにくいことも重要です。軽い運動程度なら問題なく過ごせる安定感が求められます。
7月23