プロペシアの作用機序を科学的に解説

プロペシアの作用機序を科学的に解説

プロペシアの有効成分であるフィナステリドが、どのようにして男性型脱毛症(AGA)の進行を抑制するのか、その作用機序を科学的な視点から解説します。AGA発症の鍵を握るのは、ジヒドロテストステロン(DHT)という強力な男性ホルモンです。このDHTは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、特定の酵素の働きによって変換されることで生成されます。その酵素が「5αリダクターゼ」です。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類が存在しますが、特に頭皮の毛乳頭細胞に多く存在し、AGAの発症に深く関与しているのはⅡ型5αリダクターゼであると考えられています。テストステロンがⅡ型5αリダクターゼによってDHTに変換されると、このDHTが毛乳頭細胞にあるアンドロゲン受容体(男性ホルモン受容体)と結合します。この結合がシグナルとなり、毛母細胞の増殖を抑制する因子(例えばTGF-βなど)が放出され、毛髪の成長期(アナゲン)が短縮されます。通常、毛髪は数年間の成長期を経て太く長く成長しますが、AGAではこの成長期が数ヶ月から1年程度に短縮されてしまい、毛髪が十分に成長する前に退行期、そして休止期へと移行し、抜け落ちてしまいます。これが、AGAによる毛髪の細毛化(軟毛化)と抜け毛増加のメカニズムです。プロペシアの有効成分フィナステリドは、このⅡ型5αリダクターゼを選択的に阻害する作用を持っています。フィナステリドがⅡ型5αリダクターゼに結合することで、その酵素活性が阻害され、テストステロンからDHTへの変換が抑制されます。その結果、頭皮におけるDHT濃度が低下します。DHT濃度が低下すると、アンドロゲン受容体への結合が減少し、毛母細胞の増殖抑制シグナルが弱まります。これにより、短縮されていた毛髪の成長期が徐々に正常化に向かい、毛髪がより長く、太く成長できるようになります。また、休止期にあった毛包が成長期に移行するのを助ける効果も期待されます。このように、プロペシア(フィナステリド)は、AGAの根本的な原因であるDHTの生成を抑制することで、ヘアサイクルの乱れを是正し、抜け毛を減らし、毛髪の質を改善するというメカニズムで効果を発揮するのです。