私が自分の額の広さに違和感を覚え始めたのは二十代後半の頃でしたが最初は気のせいだと思い込みたい一心で鏡の前で前髪を必死に整える毎日を送っていました。しかし現実は非情であり風呂上がりの濡れた髪を見るたびに深くなっていくM字のラインに絶望し風の強い日には外出することすら億劫になるほど私の心は薄毛というコンプレックスに支配されていきました。ありとあらゆる育毛剤を試しヘッドスパに通いサプリメントを飲み漁りましたが劇的な変化は訪れず銀行口座の残高が減っていくのと反比例するように私の自信も失われていきました。そんなある日久しぶりに会った友人が以前よりも髪が薄くなっているにもかかわらず短髪にして堂々と笑っている姿を見て私は雷に打たれたような衝撃を受けました。彼は隠すことをやめ自分自身の変化を受け入れた上でそれを個性として楽しんでいるように見えその姿は必死に隠そうとして卑屈になっていた私よりも遥かに輝いて見えたのです。その日を境に私は長年固執していた長めの前髪をバッサリと切り落とし美容師にお願いしてM字が目立たないベリーショートにしてもらう決意をしました。カットが終わって鏡を見た時そこには薄毛を隠そうとしていた惨めな自分ではなく年相応の渋さを纏った新しい自分が映っており不思議なことにあれほど気にしていたM字部分が全く気にならなくなっていることに驚きました。もちろん医学的な治療を否定するつもりはありませんが私にとっては自分の現状を受け入れ隠すことをやめるというマインドセットの転換こそがM字はげという悩みから解放されるための特効薬でした。今ではこの広くなった額も私の人生経験を刻んだ年輪のようなものだと捉えられるようになりM字はげであることにとらわれずファッションや仕事に全力で打ち込める充実した日々を取り戻すことができました。これまで不治の病とまでは言わずとも改善が困難とされてきたM字はげですが近年の科学技術の進歩によりその治療法は劇的な進化を遂げつつあり従来の薬物療法や植毛手術の枠を超えた次世代の治療法が現実のものとなろうとしています。現在最も注目を集めているのが毛髪再生医療の分野でありこれは自分の毛包組織を採取して培養し数を増やしてから頭皮に戻すという技術で実現すればドナー不足の問題を解消し理論上は無限に髪を増やすことが可能になると期待されています。資生堂や理化学研究所などの大手機関が臨床研究を進めており実用化に向けたハードルは着実にクリアされつつあるため数年後には一般的な治療の選択肢として確立される可能性が高まっています。またiPS細胞を用いた毛包の再生技術や遺伝子レベルで薄毛の原因を解析し特定の遺伝子の発現をコントロールする遺伝子治療の研究も進んでおりこれらが実現すればAGAそのものを根治させることができる未来が訪れるかもしれません。