同じ「薄毛」という悩みを抱えていても、その背景にある生活習慣は人それぞれです。ここでは、対照的な二人の男性、AさんとBさんが、ランニングという習慣を取り入れたことで、髪だけでなく人生にどのような変化が訪れたのか、その事例を追ってみましょう。Aさん(32歳)は、典型的なメタボ体型に悩む営業マン。毎日のように取引先との会食が続き、飲酒量も多く、運動習慣は皆無でした。体重の増加とともに、頭頂部の薄毛が急速に進行し、実年齢より老けて見られることに強いコンプレックスを抱いていました。彼がランニングを始めたきっかけは、医師からの厳しい警告でした。「このままでは髪どころか、命が危ないですよ」。その一言で一念発起した彼は、まず夜の会食を断り、その時間を使って近所を走ることから始めました。食事も、揚げ物をやめて野菜中心の和食に切り替えました。半年後、彼の体重は10キロ以上減少し、血液検査の数値も劇的に改善。そして、それに伴うように、頭皮の脂っぽさがなくなり、抜け毛が明らかに減ったのです。肥満が改善されたことで全身の血行が良くなり、乱れたホルモンバランスが正常化したことが、髪にも良い影響を与えた典型的なケースです。一方、Bさん(28歳)は、痩せ型のシステムエンジニア。彼は、体型に問題はありませんでしたが、プロジェクトのプレッシャーからくる慢性的なストレスと不眠に悩まされていました。眉間にしわを寄せ、常にイライラしている彼の髪は、細く元気がなく、M字部分の後退が目立ち始めていました。彼がランニングを始めたのは、ストレス発散が目的でした。仕事が終わった後、音楽を聴きながら無心で走る時間は、彼にとって唯一、仕事のことを忘れられる貴重な時間となりました。走り終えた後の心地よい疲労感は、彼を久しぶりの深い眠りへと誘いました。彼の場合、ランニングはストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げ、自律神経のバランスを整える「メンタルケア」として機能しました。その結果、頭皮の緊張がほぐれて血行が改善し、髪にハリとコシが戻ってきたのです。AさんとBさんの事例は、ランニングが様々な角度から薄毛の原因にアプローチし、生活習慣全体を好転させる力を持つことを示しています。